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アースモンダミンカップのチケット料金

      2020/07/06

話題になった高額チケット

アースモンダミンカップ2013は、堀奈津佳プロが4日間競技のトーナメントレコードを大きく更新する21アンダーで優勝。堀プロは今季2勝目ですが、初優勝のアクサ・レディースではルールをめぐるトラブルがあったりしたので、ぶっちぎりの優勝は非常に喜ばしい結果になったと思います。
ちなみに、3日間競技のトーナメントレコードは、アニカ・ソレンスタムがミズノクラシックで出した24アンダー。アニカはやはりすごいです(汗)

さて、この大会では入場チケットが高額なことが巷で話題になっていました。
土日決勝ラウンドのチケットは、前売り8000円。当日券はなんと一日で10000円です。

ちなみに昨年のこの大会は、日曜日の決勝ラウンドのチケットが当日3000円。前売りだと1500円で買えます。4日間競技に変わったとはいえ、3000円が一年で10000円になるのは、衝撃的な値上げです。
ハイパーインフレが局地的に訪れたのかもしれません(冗談)。

この値段ですが、そのかわりというか、値段が上がった分、ギャラリープラザでの食事、軽食、ドリンクがすべて無料になっています。アルコール類のみ有料です。実際に来場された方の中には飲食代が無料であることを喜ばれている人もいたみたいですね。

で、気になる最終日の来場数ですが、以下のようになっています。
半減とまでは行きませんが、ギャラリー数自体は減っています。

  • 2012年 5,741人
  • 2013年 3,287人

この数字を見て、いろんな意見があると思うのですが、私としては意外と多いなという印象です。サービスが向上したとはいえ、これだけ大きく値上げしたにも関わらず、来場者は4割減程度に踏みとどまっています(※招待客など固定客を除くと半減に近いかもしれません)。
同じく千葉で行われたサーバーエージェントレディース最終日の入場者は3,245人だったので、まずまず健闘したといえるのではないかと。

あり得ない仮定ですが、例えばすべてのギャラリーが当日券を購入して入場していたとしたら、チケットの売り上げはこんな感じで今年の方が多くなります。この計算は大雑把ですが、それでも値上げ分でドリンクやギャラリープラザの食事分くらいの経費は簡単に捻出できそうです。

  • 2012年 1722万3000円
  • 2013年 3787万円

ターゲットとなるゴルファー像とは?

Gotenba

さて、ここまで書いて、やっと本題。

私の周りでもこの価格設定には賛否両論がありましたが、概ね新しい試みということで評価している方が多かったようです。上記のように採算ベースで合ってくれば追随するトーナメントもでてくるかもしれません。
※実際には8000〜10000円のチケットをためらいなく購入したギャラリーは決して多くないと勘ぐっています。招待客がどのくらいの比率になるのか知りたいものです。

しかし、いくら利益が出ても、この価格設定はマーケティング的には危険だといわざるを得ないと思います。

一番問題になるのは、どういう方に来てもらうかという顧客のターゲッティングです。
首都圏開催のゴルフトーナメントで、わざわざ遠いゴルフ場に足を運んで観戦する方は、相当なゴルフファンだといえます。そのターゲットとなるゴルフファンが、何を求めるかといえば、これは紛れもなくゴルフであるはず。決して無料のフードやドリンクではないはずです。

高額なチケットを販売するのに付加価値を高めるのであれば、フード無料のような企画ではなく、ゴルフファンが求めるサービスなりコンテンツなりを提供するべきです。試合に興味があれば観戦面で、特定プロのファンであればファンサービスの面で、付加価値をつけていくことを考えるべきだろうと思います。

首都圏でフード・ドリンクが無料でもそもそもその価値はあまり高くありません。同じ金額を出せば、都内で圧倒的に美味しいものが食べられます。質より量を重視する方でも10000円分食べるのはなかなか大変です。フード・ドリンク無料には物珍しさはあれど、さしたる価値はないと思います。

つまり、決勝ラウンドのチケットを購入されたギャラリーは、相場よりもかなり高額なチケットを、好きなゴルフ見たさに敢えて購入した生粋のゴルフファンといった人物像を推測することもできます。この購買心理は当たらずとも遠からずだと思いますが、いかがでしょう。

現在のゴルフ市場は、こうした熱心なゴルフファンによって支えられています。そしてこうした熱心なゴルファーが、高齢化したり、ゴルフから離れたりして減少しているのが現状です。付加価値を高めて、チケットの単価をあげて利益額を確保する戦略は一時的には成功するかもしれませんが、中長期のマーケティングを考えた場合、すでに先細り感が現れています。物珍しさがなくなる来年も同様の価格戦略であれば、ギャラリー数はさらに大きく減少するでしょう。

つまり本来考えるべきなのは以下の2点だと考えます。
チケットを高額にしたり、コンビニ飯に毛が生えた程度の食事を無料にすることは、本質的とはいえないでしょう。

  1. 熱心なゴルフファンが価値を感じるゴルフコンテンツ、ファンサービスの提供
  2. 新規のファンを集めるための施策

特に⑵に関していえば、チケットの単価はむしろ下げることが必要になると思います。その点、アースモンダミンカップは18歳未満無料になっていて、もし通常のチケット代金なら、親子連れにもっと訴求ができたのではないかと感じます。

今回の件で、一番問題だと思ったのは、実際に来場される人の心理がわかっていないのでは?と思える顧客ターゲットの不明瞭さです。闇雲にいろんな施策をしても、そこの根本のところを間違っていると、単なる徒労になりかねない。

ガンバリズムとか、とりあえずやってみようを評価する人も多いですが、マーケティング施策はちゃんと考えて行わないと、かえって逆宣伝になることが多いです。

※この話、すべて人からの聞きかじりで現地に行ったわけではないので、間違いがあれば、現地を知る方に訂正いただければ幸いです。

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