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JGAが日本オープンを欠場した岩田寛プロに制裁

      2020/07/06

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岩田寛プロにJGAが「日本オープン」などの2年間出場停止という制裁を加えるというニュースがありました。
Yahoo!ニュースTOPに出たので、かなりのアクセスがあったと思われます。

米ツアー参戦の岩田寛をJGAが制裁  「日本オープン」など2年間出場停止に(GDO)

実際にはJGA主催競技のみでもあり、アメリカのPGAツアーを主戦場にする岩田プロには大した影響はないと思われますが、いずれにせよ国内ゴルフの主管団体が制裁を加えるというのは穏やかではありません。

私の考える問題点は次の2点です。

・そもそも罰則規定がないにもかかわらず、後出しで一方的に処分を下した。
・日本のトップ選手3名がスキップする日本オープン

事後処分による公益性の不在

記事によれば、日本オープンにエントリーしながらキャンセルし、PGAツアー開幕戦を優先したことが処分の対象になったということです。キャンセルはないに越したことはないですが、様々な事情でキャンセルせざるを得ない状況となるプロも存在するはずです。
例えば、病気や事故、身内の問題でキャンセルせざるを得ない場合でも処分を課すのでしょうか?

少なくとも処分規定は明確にしておく必要があると思います。組織の運用は、ルールに基づいて行われるべきで、事後に恣意的にすすめるのなら、北朝鮮や中国のような一党独裁国家と変わりません。公益社団法人であれば、なおさら運用は厳格であるべきだと思います。

事後での処分がどうしても必要の場合は、少なくとも密室で決めるのではなく、正式にリリースして組織としての見解を詳らかにしなくては、公益性を担保することはできないでしょう。

今回のケースでは処分保留とし、来年以降に罰則規定を設けるなどするのが妥当だと考えます。

日本オープンの権威とは?

JGAの専務理事の方は、「エントリーは神聖なもので、組織として看過することはできなかった」とコメントされているとことですが、この裏にあるのは(日本の神聖なナショナルオープンを欠場して、アメリカの試合に出るとはけしからん)というプライドめいたものではないかと感じます。

しかし、日本人のトップ選手、松山英樹、石川遼、岩田寛はいずれも欠場。
彼らは全てアメリカの試合を選択しています。

つまり、日本のナショナルオープンの権威よりもPGAツアーの開幕戦を重要だと選手は考えているということです。これがけしからんということだと思いますが、事実としてトップ選手が日本オープンにそれほどの価値を見出されていないことを改めて認識する必要があると思います。実際、今回の処分も岩田プロには大きなダメージにはならないでしょう。
エバって罰則を課したところで、かえって選手からの求心力を失うだけです。

本来、日本人選手なら、日本オープンは誰でも大切にしている大会のはず。
であれば、世界で戦う日本のトップ選手が出場しやすいように、スケジュールやレギュレーションを準備するのが、本来、JGAがすべきことではないでしょうか? 
男子プロゴルフの人気が低迷する中、居丈高に罰則を加えて、出場出来ないようにするなど、愚行の極みと言わざるを得ないでしょう。

繰り返される組織の論理

思い出されるのは、今年の頭にJGTOから制裁金を課せられた松山英樹プロのケースです。
松山プロは国内賞金王を獲得し日本ツアーのシード権を得ましたが、その後になって、国内のシード選手には年間5試合の出場が義務づけられるという規定が決まり、出場義務を満たせない松山プロが、制裁金に加えて翌1年間のシード権停止を課せられました。賞金王によって得た権利を簡単に剥奪されるのであれば、賞金王の権威自体も損ねかねません。

この件はJGTOですが、やはり事後に決められたルールで選手が処罰されるという点で、岩田プロのケースと似ています。日本の組織はアメリカに挑戦するということを基本的によく思っていないのかもしれません。処罰したところで後味が悪くなるだけでなんらの解決にもなっていないことも共通しています。

現代のスポーツは世界挑戦と切り離して考えることは難しくなっています。
Jリーグからよりレベルの高いヨーロッパのリーグで活躍するサッカー選手や世界ランキング上位の選手に勝利する錦織圭選手などが人気になるのは、グローバルでの活躍があるから。最近ではラグビーワールドカップでの日本代表の奮闘が記憶に新しいところです。なぜラグビーがあれほどの反響があったかといえば、大きな実力差がある海外の強豪に勝利したためです。

松山、石川遼、岩田の三選手が海外挑戦することは、日本のゴルフ界にとってメリットこそあれ、足を引っ張ることでJGAやJGTOが被るダメージは決して小さいものではありません。ゴルフファンは、PGAツアーが世界最高の舞台であることを認識しており、ジュニアゴルファーはそこに挑戦する選手たちに夢を抱くのです。
それを、応援するならまだしも制裁を加えるとは。。

ドメスティックな論理はもう通用しないことにJGAの方は気づくべきです。
主管団体として、恣意的な論理ではなく、ゴルフ界の未来にとって大切な施策を実行して欲しいと思います。

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