日本の軟鉄鍛造のふる里、兵庫県市川町
2020/07/06
軟鉄鍛造の街、いちかわ
ゴルフダイジェストの季刊誌『Choice』の最新号で、兵庫県市川町の特集記事が載っています。
市川町は、日本のゴルフクラブ製造発祥の地といわれる所で、二十社近いゴルフクラブ関連の企業のあるゴルフクラブの街です。刀鍛冶の伝統から始まった、軟鉄鍛造アイアンの製造は世界的に評価されています。
そんな日本の鍛造のふる里、いちかわを渾身取材しました。
是非、誌面をご覧ください。
ゴッドハンドと邂逅!
今回の取材は、私自身のゴルフクラブ観が変わるほどの体験でした。
もっとも、「日本の軟鉄鍛造最高!」「いちかわの職人最高!」と単純に感じたわけではないのですが、脈々と伝わる職人技への畏敬と、それが今後続いていけるのかという「漠然とした不安」で、厳粛な気持ちにならずにはいられませんでした。
ブログでは、誌面に載りそうもない小ネタを何回かにわけて、少し紹介できればと思います。『Choice』本誌と併読していただけると幸いです。
今回は、一つだけエピソードを紹介します。
取材のハイライトのひとつが、ゴッドハンドと呼ばれる三浦勝弘さんへのインタビューでした。私は、10数年来の三浦ユーザー。最近はあれこれと目移りしていますが、三浦さんへの尊敬を欠かしたことはありません。
その取材の中で、現在行われている一般的な軟鉄鍛造製法ではない、古くから行われている製造法を教えていただきました。それが上の写真二枚。
上は、鉄のブロックから、アイアンの形を切り出し、形を整えてクラブにするというもの。
もう一つは「火造り」と呼ばれていて、鉄の棒を熱しながら叩き、少しづつアイアンの形にしていくというもの。熱しては叩き、熱しては叩きを繰り返す手間のかかるもので、鉄の温度管理も非常に難しいといいます。
現在は市川でも出来る職人はわずかにしかいないとのこと。
当然、現代のクラブに比べると、形状の精度などは比べ物にならず、過去の職人の苦労が伺える製法です。
ただ、三浦さんがいわれたのが、「形状を揃えることなど望むべくもないが、こちらの製法の方が素材は均一になる。鍛造すると組織は緻密になるかわりに、部分でどうしても緻密さが変わる」ということ。
進化した製法、それによって得たもの、失われたもの。
三浦さんの言葉は、私にいろいろのことを考えさせられました。
もっともそれがわかるのも三浦さんだから。
ゴルフクラブの奥深さが、スッと門戸を開いたような、不思議な体験でした。
『チョイス春号』もよろしくお願いします!