ブリヂストンゴルフ「J815」ドライバー新製品試打会
2020/07/06
主にライターとして活動するコヤマカズヒロのゴルフ情報サイトです
2020/07/06
派手なデザインは、モデル単体としてはよいと思いますが、「ブリヂストンゴルフ」のブランドイメージとしてはやや不明瞭な印象を受けます。すでに発売されている「J715」は、ツアーステージ時代に比べると、やさしく今風の性能になっていると感じますが、それでも操作性重視で形状もシャープな上級者好みの印象があります。それはツアーステージのファンを今までどおり取り込むためにも当然の方針。
一方で今回の「J815」ドライバーの派手なデザイン。
硬派でいくのか、斬新なイメージで勝負するのか、テクノロジーをアピールするのか、ブリヂストンゴルフのブランドとしてのアイデンティティティがまだチグハグな印象があります。
硬派な「ツアーステージ」と斬新な「ブリヂストンゴルフ」で、ブランドの棲み分けをしても良かったのではないかと感じます。
クラウン部のデザインへの好き嫌いを解消するために、派手なデザインのない黒ヘッドのモデルも発売。さらに、カラーを様々にオーダーできるサービスも始まります。好きなカラーが選べるというのはユーザーにとっては大きなメリットです。
ただ、このなんでもできる感じはちょっと曲者。
せっかく新ブランドを立ち上げようとしていることもあり、ブランドの明確なイメージが主張できる色に絞ったほうがよいのではないかとも感じます。
「J715」登場から比較的短いスパンで、同じブランドからイメージのかなり異なるモデルが出るということに唐突な印象を受けるゴルファーは少なくないのではないでしょうか。それはブランドイメージに対して、少なからずマイナスに働くと思います。
そして、これはメーカーの方にも繰り返しお話したのですが。
モデル数が多い。
ツアーステージの時は、「909」「709 D430」「709D450」「GR」に限定モデルもあったりして、なかなか複雑だったわけですが、ブリヂストンゴルフになってからは、「J715」2モデルで、シンプルでいい感じと思っていました。しかし、油断していると、「J715 B3+」、「J715 B5+」が加わり、今回さらに「J815」が加わりました。
アイアンは今回「J15」アイアンが発売。
こちらも5モデルがラインナップされています。
職業として、ゴルフギア情報をずっとウォッチしている私も、情報に追いつくのがなかなか大変。一般ユーザーがどのくらいついてこれているのか、心配です。あまりに情報過多になると、ライトユーザーは拒否反応が出るおそれもあります。
ブリヂストンゴルフに限らず、多くのメーカーがモデル数やSKUをどんどん増やす方向に向かっていて、結果的にそれは上手くいっていないと思います。モデル数が多いと、ユーザーの細やかなニーズに対応できるわけですが、実際は選びにくさにもつながります。
非常に逆説的ですが、売れているクラブはモデル数は少ないのです。
「ゼクシオ」は1モデル。「915」は2モデルです。
ピン「G30」は3モデルになりましたが、かわりに「i25」を廃盤にしました。
ユーザーは「G30」をまず選んでいると考えると1モデルしかないとも言えるわけで、これは選びやすさにつながると思います。
ゴルフ用品市場は世界的に縮小しているのに、クラブのモデル数は3倍以上になっているという統計もあり、非常に悪い傾向だと感じます。現代はそれにカスタムシャフトが加わるので、主要メーカーのシャフトだけでも4種類くらいから選択する形になります。
ヘッドが数種類、シャフトが数種類、それを選ぶのが楽しいユーザーはいいのですが、一方で苦痛を感じるゴルファーも決して少なく無いと思います。
レストランでもメニューがたくさんあると返って選びにくいものです。
現在、iPhoneは2モデル。大きい方と小さい方の2つです。
スマホの好みはそれこそ無数に、ユーザーの数だけあると思いますが、それは別のところで吸収しているわけであって、選ぶときは2種類。Appleのマーケティングには、ヒントがあるんじゃないかと思います。
肝心のクラブはというと、ドライバー、アイアンともなかなか良かったです。
ドライバーは、これまでのBSらしからぬやや深めの重心で、今風のヘッド挙動。低スピン性能が強く、適度にミスもカバーしてくれます。
「KUROKAGE XT」のように先端の動きの少ないシャフトで、しっかりと振っていくと相性が良さそうです。
つかまりや打ち出し角の高さがほしければ、先端の動きがあるシャフトで。
ロースピンで重い球になりやすいドライバーです。
「J15」アイアンも非常に完成度の高いモデル。
おおぶりなヘッドですが、カタログをみると単一素材での設計に見えます。
たしかに単一素材の一体成型っぽい感触がします。これはなかなか心地よいです。
ヘッドが大きい飛び系アイアンですが、見た目はスッキリと構えられ、振り感もシャープに使え、違和感なく扱えます。そのままバッグに入れてもいいかなと思えるほどの完成度。
このモデルと軟鉄鍛造キャビティの「J15CB」だけでいいのではとも思いますが、それはさておき。
BSはこれまでも良いクラブをリリースしていたと感じます。
現行モデルのFWとUTも最高にいい感じです。
しかし、このブログでも何度も書いていますが、いいものが売れるわけではない。
いいものを作っても売れないケースが、現代のゴルフギアの世界では大半です。
今回はレディースモデルの「J615」も相当気合の入ったプロダクトです。
理由は割愛しますが、レディースはSKUをもっと増やしたほうがいいと思います。その意味では「J715」に続いて、レディースモデルがフルラインナップされるのはいい傾向です。
デザインもいい感じに見えます。
定価50000円(税別)の「J615 CL SKY」フェアウェイウッド。このへんの人気がでると、レディース市場も活性化するなと思います。意欲的なプロダクトですね。
宮里藍選手を起用したプロモーションも好印象です。
実際に打ってみることでクラブの本質的な機能がわかるゴルファーは少数というのが私の持論。
一般的なユーザーは、インパクトや振った時の感触や結果をみて、クラブ選びをします。ブランドイメージにも大きく影響されます。
イメージから得られるプラセボ効果も大きな影響があると思います。
最近、インチキな宣伝文句でイメージを醸成して物を売っている、中小のメーカーさんが増えてきました。
非常に嫌な気持ちになります。
ブリヂストンゴルフのプロダクトは、誠実で良いものだと思うので、それに見合ったブランド戦略があるといいなと感じます。老舗ならではのどっしりとした販売戦略のほうが意外とハマるかもしれません。